川床仕舞いのお知らせとお礼
2025.10.03 11:47
今年も無事に川床仕舞いのお知らせができます。
9月30日をもって2025年の川床営業を終了いたしました。
どれだけ美しく、涼しい川床であっても、そこに座って楽しむ方々が存在しない限り成り立ちません。この場所に華を添えてくださった全ての方に御礼申し上げます。
また「奥貴船 兵衛」らしいもてなしが表現されるまでに力添えくださったお取引先関係者様、そして私たちと同じ心でお客様を日々迎えてくれたスタッフにもお礼申し上げます。

これからの私たちはー。
人の心に届く体験を目指して、また少し前へ進みます。
維持することですら難しい時代だからこそ、前へ進むタイミングが来ていると感じます。今年は特にそう感じる出来事がございました。
私の考える体験とは、目を閉じればいつでも戻ることのできる心の旅のこと。
五感を通して心が喜ぶ体験を、私たちの手から生み出していくことが夢です。そのための試行錯誤をこれからも続けてまいります。
変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。
10月吉日
奥貴船 兵衛 一同

水と染色と奥貴船
2025.07.06 15:125月某日、川床の一番高いところから美しい【 waterfall 】が現れた・・・

染色家である玉井佐知さんと私の出会いは互いの子が通う保育施設でのこと。
その時は、まさか数年後にこのような日を迎えるとは思っていませんでした。
私はすぐに、彼女とその作品のファンなり、奥貴船というこの場所で作品を展示してみたいと思うようになりました。染色の技術に水が欠かせないものであることを知り、水の湧き出る地である貴船という場所で作品を展示してみたいという想いがさらに強くなりました。数多くの作品の中で 【waterfall of emotions】 にたどり着くのは自然な流れでした。このダイナミックな作品を水のしぶきを感じられる一番高いところから、人の気配を感じられる空間である川床に展示をすることに決めました。
川床の天井を見上げて、 【waterfall of emotions】 が姿を現した時。
あの存在感と感動の景色は忘れられません。
人と人の活気が交差する川床という場所、時間と共に表情が変わる自然の中で一日展示をすることができました。このような機会をいただきました染色作家 玉井佐知さんに、またご覧いただきました全ての方々に心より御礼申し上げます。
この作品はこれで終わりではありません。
この先も染色と水の関係がそうであるように、私たちの活動は啓蒙と共に続いていきます。
最後になりましたが、ご本人による作品のステートメントをご拝読くださいますと幸いです。

貴船に初めて足を踏み入れたのは染色を始めた19の頃でした。
水が沸く貴船の地ー、神聖な気を感じ根源的なエネルギーが満ちた場所だと強く思い、感
動したのを覚えています。【waterfall of emotions】は、この地からインスピレーションを
受け生まれた作品です。
「水」からの発想そして創造は、染色作品だからこそ成し得る表現かもしれません。
なぜなら染色は、ほぼ全ての工程で水を使うからです。染料を溶くとき、染めるとき、定
着後の水元…、水の存在は必要不可欠と言えます。
そして鮮やかな発色、高い透明感は、染料だからこその魅力です。
普段は人間をテーマに制作している私ですが、この作品で得た自然からの導きは大きく、
考え方の幅が広がり新たな視点を得る事ができました。人間の中にも、川の流れや渦を巻
く情景があっていいと感じたのです。かつて「宇宙の摂理と人体は重なっている」と残し
たレオナルド・ダヴィンチのこの言葉が自身の制作と繋がり、より自由な染色表現を試み
るきっかけになりました。
私自身20年以上、京都洛北に身を置き染色を学び、この地域を大切に考え、制作・発表を
続けてまいりました。この度、貴船兵衛様での作品展示が叶い、また団扇という形で貴船
の地に関われますことを大変嬉しく思っております。
It was as a student of nineteen years old, just beginning dyeing when I first visited Kifune.
I remember being impressed by Kifune the spiritual place full of beautiful water and ancient
power. My work 《Waterfall of Emotions 》was born inspired by this place
The idea and creation based on Water is possibly the expression able to be performed by
dyeing. It is because dyeing uses water in almost all processes of production: processes of
dissolving dye, of dyeing, of watering after fixing dye, etc.: Water is essential to dyeing.
And the brilliance of color development and transparent feeling of dyeing may be attractive
features produced only by the use of water at the various stages of dyeing.
I used to produce works of the theme of Human, but I got a new viewpoint by finding the
broad field of idea through the power of nature in Kifune. I could feel a scene with a stream
or a whirlpool of a river in the human world. Leonard da Vince once said that the
providence of the universe and human body correspond to each other. This golden saying
acted as a very stimulating suggestion for me and gave me a very good motivation for the
production of far more free expression of dyeing.
I have continued to produce works of dye, living in the north Kyoto and having a respect for
the place for more than twenty years. Now I am very happy that my work has been put on
display here in the Hyoe gallery. And I greatly appreciate the distribution of an Uchiwa
based on my work in Kifune.
染色作家 玉井佐知
Dye artist TAMAI Sachi
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新年のご挨拶
2025.01.01 10:00年末の足音はあっという間に押し寄せて過ぎ去り、静かな新年のお出ましです。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年の全てがあったからこそ、「今日」という日を迎えることができるのだと感じております。ご来店くださった皆様、関わってくださる全ての関係者様、近隣の皆様そして最後に従業員、スタッフに心より感謝を込めて新年を迎えさせていただきます。
昨年を振り返りますと、やはり真夏の気温上昇や災害規模の台風、大雨の発生など自然環境の変化を避けて話をすることができません。干上がるような暑さ、そして交通機関をも運休させる規模の大型台風の発生頻度は、この先地球規模で環境が変わっていくのだということを思わずにはいられない状況でした。
涼み処としての川床はこの先どうなってしまうのだろうか?その「異常に暑い夏」だけに頼りきったビジネスモデル。この現実と向き合う時間が増え、次世代に何を繋いでいくことができるのかを悶々と考えて過ごしておりました。
「今を生きる文化であれ」
今という瞬間を単に切り取るのではなく、歩み続けて培ってきた兵衛という文化を今という地点で輝かせる方法を見つけ、行うこと、これこそが私たちのミッションです。例えそれが今までのルールや概念からカタチを変えてゆくことであったとしても、私たちの文化が 中今 を鮮明に生きていくための選択であるとしたら、それこそが価値であると考え、この言葉を理念に前進して参ります。
共感してくださる方々と仲間と家族のために歩んでいきます。
本年も変わらぬご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

一月吉日
奥貴船 兵衛
スタッフ一同
川床営業終了のお知らせとお礼
2024.10.01 15:47 今年の川床営業は9月30日をもって終了いたしました。あんなにも存在感のあった暑い夏が終わるのは毎年のことながら寂寞とした心境になるものです。期間中にお越しになった皆様へこの場をお借りして心より御礼申し上げます。
私たちの川床の物語は終わることはありません。“奥貴船”だからこそ感じられる美しさや喜びを秋冬春と重ね、また迎える川床をより豊かなものにする為に思考を止めることなく過ごしてまいります。言葉、言語を超えた共鳴が確かにあったことを噛み締めて、これからも私達らしい川床の歴史を築いてまいります。
最後に、関わって下さった業者さまとスタッフに敬意と感謝が届きますように。また来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
10月吉日
奥貴船 兵衛従業員一同

川床が始まりました
2024.05.11 13:10 桜が散ってからは、目まぐるしく青紅葉が目覚め始めると、いよいよ美しく強く青の炎を燃やす季節の到来を「私たち」に重ねるように実感しております。 今年も例年通り5月1日より川床を設え、涼やかなお食事のひとときを過ごしていただける準備が整いました。
早速、多くのお客様とお話を交えながら、川床という空間への魅力はもちろんですが、奥貴船ならではの「食材」についてのこだわりを再確認させられる体験がございました。私たちは、創業者の兵衛が貴船神社の神主を仰せ仕り、ご参拝の皆様をもてなしたことから始まる料理旅館です。兵衛は栄養失調を経験した海軍の任務から戻ると「滋養強壮」という考えのもと「食」の在り方を見つめなおします。その季節のその場所で採れる旬の食材は味覚に美味しいだけでなく、体に不足したエネルギーを補うことができるという考えのもと、「山野草摘み」や「ジビエ猟」に熱心に取り組みます。
現在、その考えを繋ぎながら初夏には実際に貴船の山に入って私たちが摘んだ山菜の一部がお料理でお楽しみいただけます。貴船川の清く澄んだ水が培った山菜は味が濃く、香りや時に苦みも特徴的です。この時期にだけ食べることできるという点で、一期一会の出会いがコースの中に再現されています。
美味しいから、見た目が美しいから、貴重だから、、、と食べるという動機にはさまざまな理由がありますが、その中でも「心から満たされる料理」を通して現代という忙しなく厳しい世の中を強く生きていくための糧になる体験が、奥貴船 兵衛で叶うよう試行錯誤しながら取り組んでまいります。
最後に、いつもご愛顧くださる皆様と、そしてこれから出会う皆様の数だけある「非日常」をこの夏も共に過ごせますことを楽しみにしております。
5月から9月までご来店を心よりお待ち申し上げます。

奥貴船 兵衛
スタッフ一同
2024年5月吉日